少子高齢化が進む日本では、高齢者の割合が増加し、訪問診療の必要性が高まっています。さらに、内閣府の「高齢者の健康に関する意識調査」によると、高齢者の54.6%が自宅で最期を迎えたいと考えており、訪問診療の需要は今後も増加する見込みです。
しかしながら、首都圏を中心に競合の診療所やクリニックが増えるなか、具体的な集患や営業方法がわからず、不安や疑問を感じている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、前半に以前ご紹介した記事「訪問診療における集患のための営業活動」についてまとめました。後半は大手医療法人の事務長のインタビューをもとに具体的な集患や営業の方法について解説します。これまで多くの診療所やクリニックの運営を担ってきた経験に基づく具体的な営業方法は必読の内容です。
訪問診療クリニックの集患には、地域の医療機関や介護施設との連携が不可欠です。
地域の各種機関との良好な関係づくりをするには、以下の心構えがポイントです。
最低限の接遇やマナーを守りながら、相手を気遣い、誠実に対応することで良好な関係づくりができるでしょう。相手のニーズをヒアリングし、自院の強みをしっかりアピールすることが重要です。
訪問診療クリニックの集患につながる大切な営業活動は以下の3ステップです。
まずは認知してもらい、患者や他の医療機関に紹介してもらえるよう誠実な対応を心がけ、実績を積み上げていきます。患者数が増えてきたら、診療の質が落ちないよう安定した運営が求められます。
ここからは、大手医療法人の事務長の取材をもとに具体的な集患や営業の方法について紹介します。
皆さんも当然に行っていることかと思いますが、最初は周辺の病院や訪問看護ステーション、ケアマネジャー、地域包括支援センターに開院の挨拶まわりですね。まずは「認知」していただくことが重要です。
ほかには、地域で多職種の方が集まる勉強会が定期的に開催されていることがあるので、そういった場で講演をさせていただく方法もあるでしょう。
地域の医師会や包括支援センターが主催する勉強会はインターネット検索などで調べて、見つけたらご挨拶とともに講演のお願いをしています。
多職種が集まる勉強会での講演は、自院を「アピール」する良い機会です。ぜひ自院の強みがアピールできる具体的な事例をお話ししてください。
いずれの集患や営業方法も重要なことは「医師が主体」となることです。医師は訪問診療クリニックの「顔」となりますので、連携する各種機関と顔が見える関係になるという意味で医師が主体となって挨拶まわりや講演することは大きな意義があると考えています。
病院や地域包括支援センターなどの連携機関から紹介を受けた場合は原則、診療を断らないことですね。
どうしてもお断りする場合には明確な理由を伝えて、今後も関係を維持するために情報共有などの対応はしっかりしていく必要があります。
また介護施設のスタッフさんとの信頼関係を築くには、施設側のニーズに応えることが大事ですね。コールや往診などの緊急要請に対して早く応じられるか、患者さんに寄り添った対応ができるかがニーズとして多い印象です。
基本的なことにはなりますが、連携機関のスタッフさんや患者さんに対するマナーや心配りは意識しています。
日頃から関係する方々と積極的にコミュニケーションをとり、コネクションを構築しておくことで情報を得る機会は多くなると思います。
また行政が有料老人ホームやサービス向け高齢者住宅などの新規開設に関する情報を開示しています。開設時期や開設主体といった情報を事前に得られますので、そこにアプローチをかける方法がありますね。
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)などは自治体が開設する業者の公募を行っていますので、入札結果などを確認することで早期に情報が得られますよ。
「営業」は苦手な方が多いと思いますが、まずは友人や知り合いを作る感覚で動いてみるのが良いでしょう。顔を見せに行く、友人に会いに行くようにハードルを低くして取り組んでみてはいかがでしょうか。